好きなものを好きなだけ
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早くもほだされ始めた王子様の話。
はええよ!って書きながら思った・・・。 でもあいかわらず酷い男やで、王子さま。 王子様を手に入れる方法 (2.手をつなぐ) ジーノは現状になかなかに満足していた。 最初にセックスをしたときは自分から誘ったというのに、椿ときたら無駄に恥ずかしがるし、泣くし、全くどうなる事かと思ったがそれでも回数を重ねるうちに慣れたのだろう。今ではジーノが望む多少無理なプレイにも応えられるようになっていた。 (男のセックスフレンドもいいかもしれないな…) そしてそれが自分の言うことをなんでも聞くとなればなおさらだ。 ジーノはフェミニストだ。そのためたとえ一夜限りの相手だろうと女の子には、可能な限り優しくするし、己より相手が気持ち良くなることを優先する。 その点椿相手ならば自分の欲求を優先し、好きなようにできる。軽くいじめたりてみたり、やってみたかった体位や、使ってみたかった道具など思いつく限り試す事ができるのだ。 そういうわけでジーノは椿とのセックスをなかなかに気に入っていた。 明日は久しぶりのオフだ。翌日がオフの日に椿を抱くのがここ数ヶ月の習いとなっていた。椿もETUに欠かせないチームメイトの一人だし、さすがに受け身が体に負担がかかる事はわかりきっているで、そのことは最初に取り決めたことの一つだった。 ――おかげで女の子とは練習のある日しか遊べないのは不満だけどね。 そんなことを思いながら、こちらを期待たっぷりでチラチラとみてくる椿ににっこりと笑いかける。 とたんに真っ赤になって俯く姿はまるで中学生のようだ。 ベットの上ではあんなに積極的なのにね? 「シャワー浴びてくるから、ちょっと待っててよ」 すれ違いざまにそう耳元にささやきかけると、嬉しげに顔を輝かせる椿をみてジーノはくすりと笑った。まるで本物の犬ようで、ぶんぶんと振られる尻尾が見えるようだ。 ゆったりとシャワーを浴びて出てくると、ちょうど携帯が鳴った。掛けてきたのは、先日ちょっとしたパーティで知り合った、今売り出し中のモデルだ。美しく均整のとれた身体と、気の強そうな瞳がなかなかに好みだったことを思い出す。 電話に出た途端、明るい声であからさまな夜の誘いの言葉が飛び出してくる。性に奔放そうなところも中々にジーノの好みだった。 「ああ、もちろんいいよ、よろこんで。うん、じゃあ10時に」 そう電話を切った後、ロッカーで待つ椿を思い出す。きっと忠犬ハチ公のようにジーノを待っていることだろう。 ・・・まっ、いっか シャワー室から出てきた途端に嬉しげに近寄る椿に、ジーノは軽く笑いかける。 「ごめんね、バッキー。他にデートの約束が入っちゃったんだ。だからバッキーと遊ぶのはまた今度ね?」 「…えっ?」 傷ついたように揺れる椿の瞳を見て、ジーノは胸に苛立ちが募るのを感じた。酷く残酷な気持ちになる。 「また埋め合わせはするよ。それとも、何?…不満?」 意地悪くそう聞いてみる。 椿だって最初からわかっているはずだ。ジーノの中で自分の優先順位が決して高くないことに。 「いいえ、不満なんて、そんな!ただ、俺は…」 「ただ、何?」 「…いえ、何でもないっす。その、では失礼します!」 酷く傷ついたような顔をして、椿は去って行った。その背を見て己の胸が少し痛むのを感じ、ジーノは戸惑った。 ――なんで僕が罪悪感を抱かなきゃいけないの 昨夜共に過ごした彼女は、その軽そうな外見からは少し意外なくらい頭がよく、話題も豊富だった。体の相性だって悪くなく、柔らかく美しい体を、ジーノは思うさま堪能した。 素晴らしい夜だった。……そう、素晴らしい夜だったはずなのだ。 なのに彼女に笑いかける時、抱きしめた時、愛撫の時などのふとした瞬間にジーノは、椿の傷ついたような瞳や走り去る背を思い出してしまった。 あまつさえセックスの最中にこれが椿なら、などと考えてしまっていた。 そんな昨夜を思い出し、ジーノはらしくもなく舌打ちをしてしまう。これではまるで椿とセックスをしたくてたまらなかったみたいではないか。 幸い今日はオフだ。思いっきり遊んで椿のことなど忘れてしまおう。 椿が思いっきり蹴ったボールはゴールポストのはるか上を飛んで転がっていった。 「おい、椿何やってんだ!お前フリーだぞ、フリー!」 後ろから黒田の怒鳴りが聞こえる。 「ったく。練習だからいーようなものの、これが試合だったらスタメン落ちは確実だぞ。お前は波が激しいけどよ、今日は特にひどいな。なんかあったのかよ?」 横からは赤崎がいつものように厭味っぽく、けれどどこか心配をにじませて尋ねてくる。 「…すみません」 何か……ならあった。一昨日ジーノに抱いてもらえなかった。しかも、他の、おそらく女性を彼は抱いたのだろう。それがショックで上手く動けないのだ。 けれどまさかこんなことを言えるはずもなく、椿はただ謝るしかできない。 ジーノに自分以外の夜の相手や恋人がいることは最初からわかっていた。体だけでもと無理矢理迫ったのは自分だし、それが受け入れられただけでも信じられないほど幸せだった。 けれど目の前であからさまに他の人間との関係を見せ付けられたことが、自分でも驚くほどにショックだった。 どんどん欲深くなってしまう。このままでは王子を自分のものだけにしてしまいたくなるだろう。けれどあの美しく自由な彼は決して己のものになることはないのだ。 そんなことをいつまでたってもぐるぐると考えていると、自分の体は全く思うように動かくなってしまったのだ。 「椿ー、交代だ」 監督の声に振り向くと、こちらをじっと見つめているジーノと目が合った。思わず目をそらして監督の側まで走りよる。 「ったく、今日反省会だからな」 監督の言葉に、すみません、と小さな声であやまる。こちらを見つめていたジーノの冷たい瞳を思い出す。きっと嫌われた。軽蔑された。 そう思うと椿は目の前が暗くなるような心地がした。 監督とコーチにたっぷりと絞られた後、誰もいないロッカールームで椿はうずくまっていた。最初に関係をもった時はここでジーノに口淫をした。ジーノの機嫌がよければここで抱かれることもあった。 けれどもうそんなことはなくなるだろう。 あれは夢のようなものだ。その幸せな思い出だけで満足すればいいのに、椿の心はまだ欲しい欲しいとわめきつづける。 (好きです、好きなんです、) 「王子……」 「呼んだかい?」 「うわぁ」 思わず呟いてしまった声に、返事が返ってきて、椿は驚きのあまり声をあげてしまう。急いで顔をあげれば、そこにはいつもと変わらず美しいジーノが立っていた。 「なんだい、呼ばれたから返事してあげたのに、まるでお化けを見たような声を出して」 「王子、……なんでここに?」 「だって君、待ってても全然でてこないんだもの。どっかで死んでるのかと思って迎えにきてあげたんじゃない」 「待ってて、って、え?何言って?」 「君が不調じゃ、チームも僕も困るからね。おいで。特別にやさしく抱いてあげるから」 ジーノが目の前にいることが現実とは思えず、戸惑う椿の前にジーノが手のひらが差し出す。 「え、でも明日も練習じゃ……」 「ふーん、まぁバッキーが嫌ならいいんだけど」 そう言ってあっさりとひかれる手を椿はあわててつかむ。その手はいつも通りひんやりとしていた。けれど、この大きく美しい手が熱くなる瞬間を椿は知っている。 「嫌じゃないです。嬉しいっす、その、すごく」 本当に嬉しげに笑う椿になんだかジーノも気分がよくなって、つないだ手を離すことなく二人はマセラッティが停まってある駐車場まで歩いた。 ジーノの宣言通り優しく抱かれた椿は翌日の練習に支障をきたすことなく、むしろ周囲が驚くほどの活躍をみせた。 その分、ジーノはいつも以上に動かず練習に参加していた。 ――搾り取られるかとおもった、とは後日のジーノの談である。
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