好きなものを好きなだけ
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
やっとかけたー。03です。赤崎が出張ってます。ちょっと動きがあったかな。
後2つで終わる予定。 てかワールドカップ見ながら書いてて、微妙に罪悪感・・・。 王子様を手に入れる方法 (3.デート) 「王子、今ちょっといいっすか」 シャワー室から出たばかりのジーノを、そう呼び止めたのは赤崎だ。廊下の壁にもたれ、腕を組んだ姿は、いかにも待ち構えていたというようなありさまだった。 「なに?めずらしいね、サッカーの事?」 「いえ、その、ちょっと」 口ごもる赤崎にジーノは首をかしげる。例え目上の相手であろうと、躊躇せずに何でも口に出す彼にはめずらしいことだ。 「どうしたの、ザッキーらしくない。言いたいことがあるならはっきり言わなきゃ」 らしくない、という言葉に背を押されたのか、赤崎は顔をあげ、意を決したように口を開いた。 「その、椿の事、なんすけど……、二人は付き合ってるんすか?」 予想外の問いにジーノはピクリと眉をあげる。赤崎の目には確信の光があった。 ――意外と勘がいいじゃないか 「うーん、付き合っては無い、かな。」 「つまり、遊びってことっすか?」 「まぁ、そう言われればそう、なのかな。何?コッシーならまだしもザッキーが口出してくるなんて、ほんとらしくないね」 そう言うと、赤崎はふてくされたように唇を尖らせた。いつもは大人びた男だが、そういう表情をすると一気に幼く見える。 「別に、あいつもいい大人だし俺が口出すことじゃないとは思うんすけど……、椿は馬鹿みたいに、てか馬鹿なんだけど、まっすぐな奴だし、それにけっこう不安定なやつなんで、その、王子も、遊ぶならもっといい人もいると思うんで、その……あーくそ、俺何言ってんだろ」 「ふふ、ザッキーはやさしいねぇ、バッキーが大事なんだ」 「やめてください!そういうんじゃないっすから!ただちょっとほっとけねーっつーか」 しみじみとしたジーノのつぶやきに赤崎は目をむいて叫んだ。犬同士かばい合う気持ちもあるのだろうが、こちらがたらしこんだみたいな言い草はなかなかに気に入らない。 「でもね、はっきり言って僕は被害者だよ。バッキーがあんまりしつこいからしょうがなく相手してあげてるだけ。文句ならバッキーに言ってくれるかな?」 「もう言いました」 「えっ?」 即答する赤崎に思わず驚きの声が出る。 「もう言ったんですけど、聞く耳もたないんすよ、あいつ。俺が全部悪いんです、王子は悪くないんですの一点張り。下手すると王子より頑固っすよ」 「……ふぅん、バッキーたら、そんなことを、ね」 「椿はけっこう自分で抱え込んで自滅しちゃうタイプなんすよ。遊びには向かないと思いますけど」 「まあザッキーの意見はありがたく受け取るよ。話はそれだけ?僕、結構急いでるんだ、お先に失礼するよ」 「椿が待ってるからっすか?」 赤崎に背を向け、ロッカールームへと向かおうとした途端、背後からそう声がかかる。振り向けば、赤崎は、黒田たちに向けるような挑発的な表情でこちらを見ていた。 「さっき、しょうがなく相手してあげてるとか言ってましたけど、王子ってはっきり言ってそんな殊勝なタイプじゃないでしょ?嫌なら、何が何でも断るじゃないですか。なんで“しょうがなく”付き合ってるんすか。」 その問いに、とっさに答えは出てこなかった。 ロッカールームへ戻ると、やはり椿が忠犬のように待っていた。彼と目があった途端、ジーノの唇からは深いため息がこぼれ落ちる。 「お、王子、どうかしたんすか」 「別に」 いらいらと、どこが不機嫌そうな返事に椿はビクリと震える。シャワー室へと行く前は普通だったのに、何か悪いことでもしたのだろうかと不安になった。 「……ねえ、バッキーお腹すいてる?」 「へ?」 突然思いついたようにジーノそんなことを尋ねてきた。急な質問に戸惑っていると「どうなの?」と重ねて尋ねられ「わりと減ってるます」と返すと、ジーノはにっこりと笑った。 「じゃあさ、デートしようか?」 見とれるほど美しい笑顔だった 連れて来られたのは、椿一人では決して入ることのできないだろう、高級イタリア料理店だった。 一応ロッカーの中にいれっぱなしだったスーツを着てきたが、ブランド物などではなく、あきらかに浮いているだろう己を連れてジーノは恥ずかしくなのか心配になる。そんな椿の心配をよそに、ジーノはウェイターを呼びとめると次々に料理とワインを頼んでゆく。 「ここすごくおいしいんだよ、いくらでも入る。ほらこのチキンなんて最高」 緊張のしすぎで喉に通らないだろうと思ったが、ジーノがあまりにすすめるので、一口ふくむ。 「おいしい!王子、これすごくおいしいです」 「そう?よかった。これも食べなよ」 想像したよりおいしくて、思わずがつがつと食べてしまう。今まで食べたことないような味わいに、やはり高いところは違うなと感動していると、ジーノがほほえましげな笑顔を浮かべて椿を見つめていた。 「あ、すいません、俺ばっか食べちゃって」 「ううん、本当においしそうに食べるなーと思って。バッキーはもっと食べたほうがいいよ。あんまり細いと抱き心地悪いしね」 「お、王子こんなとこで、そんな」 なんでもないような顔をして、とんでもない事を言うジーノに椿はかっと頬を赤くする。そんな椿を見て、ジーノがあきれたようなため息をついた。 「まったく、君って本当に典型的な日本人だよね。イタリアではこんな会話そんなに慌てるようなことじゃないよ」 そこからはジーノの独壇場だ。イタリアのこと、集めている椅子の話、サッカーの事、さまざまな話題を楽しげに口にする。椿はそれに気の利いた返事で応えるられず、ただ頷くことしかできない。けれど、彼の話を聞いているだけで、椿の胸の中に幸せな気持ちがふつふつとわきあがった。 「今日はどうしたんですか」 結構な量があった料理も二人でペロリとたいらげ、ワインも二本開けて、もう帰ろうかというところで思い切って尋ねてみた。 「え?何が」 「何って・・・こんなデ、デ、デートだなんて」 「もしかして、いやだった?」 「まさか!ただ…王子の様子がいつもと違ったから」 「あっは、僕の犬たちはどちらも勘が鋭いなぁ。……あのね、さっき廊下でさ、ザッキーに怒られちゃったんだよね。あんまりバッキーを悪の道に引きこむなってさ」 おどけるように笑った後、軽い調子で話すジーノの言葉に、椿はサッと顔色を青くする。それを見たジーノはより一層おかしそうに嘲笑うが、その目は全く笑っていない。 「全く失礼しちゃうよね。僕がたぶらかしたみたいに言われちゃうなんてさ」 「す、すいません!俺が、俺が悪いのに、そんな」 かすかに震え、今にも土下座しそうに謝る椿を見てジーノはすこし瞳を和らげた。 「そう、君ザッキーに全部自分が悪いって言ったんだって?でもね、はっきり言ってこういうことにさ、どちらかが完璧に悪いなんてことは無いんだよ。どちらも悪いし、どちらも正しい。わかる?」 いまいち釈然としない表情の椿に、ジーノは宣言するように堂々と命令する。 「僕のこと好きならもっと堂々としてよ」 その力強さに椿は何度も頷いた。 支払いは自分が払うという椿の主張は受け入れられずに、結局ジーノに奢られることとなった。「今度は奢ってよ」と言われ、その今度、という言葉に少し舞い上がる。 レストランから出ると目の前にはタクシーが停まっていた。 「バッキーはこれに乗って帰りなよ。僕は、ちょっと行かなきゃいけないところがあるから」 「えっ」 今日はしないんですか、と言いかけてやめる。さすがにそんなあからさまな事を、こんな往来で聞けそうもない。けれど名残惜しくて、思わず見つめていると、ジーノの手が伸びて、椿の頭をくしゃりとなでた。 「やだなぁ、そんなもの欲しそうな顔しないでよ」 頬を染め、思わず顔に手をやる。今、一体自分はどんな表情をしているのだろう。 「たまにはこんな日があってもいいでしょ?」 そう笑ったジーノの顔は少し切なそうに見えた。 タクシーに乗ってからも最後に見たジーノの表情が椿の頭をめぐった。今日のデートの意味を考え、浮かんだそれに首をぶんぶんと振る。 期待するな、期待するなと言い聞かせるほど、彼の顔がよぎった。
PR |
カレンダー
Web Clap
拍手お礼 7/5 米ハピバ小話一つ。
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
|